名古屋地方裁判所 昭和57年(ワ)4012号 判決 1988年8月10日
原告(反訴被告)
岡田義夫こと姜鶴鳳
被告
上田徹
被告(反訴原告)
宝菜食品こと上田晴義
主文
一 被告徹、被告晴義は、原告に対し各自金三一万五四八二円及びこれに対する昭和五八年一月一一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の本訴請求及び被告晴義の反訴請求を棄却する。
三 訴訟費用中、本訴費用はこれを一〇〇分し、その三を被告徹、被告晴義の負担とし、その余を原告の負担とし、反訴費用は被告晴義の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 本訴請求の趣旨
1 被告らは原告に対し各自金一一〇〇万円及びこれに対する昭和五八年一月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 本訴請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
三 反訴請求の趣旨
1 原告は被告晴義に対し金三九四万二七〇〇円及びこれに対する昭和五八年七月七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 仮執行宣言
四 反訴請求の趣旨に対する答弁
1 被告晴義の請求を棄却する。
2 訴訟費用は被告晴義の負担とする。
第二当事者の主張
一 本訴請求原因
1(一) 原告は、昭和五六年二月一日午前一〇時三〇分ころ愛知県豊明市阿野町西平坪七丁目七番地の県道交差点を乗用自動車(以下「原告車」という)を運転し、同交差点において右折のため停車していたところを、被告晴義の経営する食品加工販売業の従業員被告徹運転にかかる被告晴義保有の乗用兼貨物自動車(以下「被告車」という)に追突された。
(二) その結果、原告は頸部捻挫の傷害を受けた。
2 右事故の原因は、被告徹の前方不注視の一方的過失によるものであつて、被告徹は民法七〇九条、被告晴義は自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という)三条により、各自、原告の蒙つた全損害を賠償する責任がある。
3 原告の損害
(一) 治療費等 金二三六万〇七三〇円
(二) 入院雑費 金七万三二〇〇円(一二二日間に対し、一日金六〇〇円の割合)
(三) 休業補償 金一〇九一万二〇〇〇円
(1) 症状の固定した昭和五七年六月一一日までの分
本件事故発生の日から症状固定の日までの四九六日間は傷害治療のため完全に勤務につけなかつたものである。原告の受傷当時の給与及び賞与収入は一か月平均六六万円(一日平均金二万二〇〇〇円)を下らなかつたものであり、この間の逸失利益は金一〇九一万二〇〇〇円になる。
(2) 症状固定後の将来にわたる逸失利益 金四八三万九一三五円
原告は昭和五七年六月一一日症状固定と診断され、後遺症として頸部痛・頸椎の運動制限・頭痛・めまい・耳鳴・左手指のしびれ等の神経障害(第五ないし第七頸椎椎間板狭小による)が残存し、その程度は自賠法施行令第二条別表の第一二級第一二号に該当する。そのための労働能力喪失率は一四パーセントに達するものであり、その額は一か月金九万二四〇〇円になる。右症状は五年間は継続するものと認められるので、年額金一一〇万八八〇〇円に新ホフマン係数(中間利息年五パーセント)を乗じて算出すると金四八三万九一三五円になる。
(四) 慰謝料 金四〇〇万円
入院一二二日間、通院は昭和五七年六月一一日までの間に実日数二一二日、後遺障害は前記のとおり第一二級に相当することを考慮すると金四〇〇万円を下らない。
(五) 弁護士費用 金一〇〇万円
(六) 以上を総計すると、金二三一八万五〇六五円に達するが、右の内金として被告らから合計金三八八万二七〇〇円、自賠責保険金一二〇万円が支払われているので、残金は金一八一〇万二三六五円である。
4 よつて原告は被告らに対し、各自右金額の内金一一〇〇万円並びに本訴状送達の翌日である昭和五八年一月一一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 本訴請求原因に対する答弁
1 請求原因1のうち(一)の事実は認め、(二)の事実は否認する。
2 同2は争う。
3 同3の事実は否認する。
4 本件事故の状況は、被告徹運転の被告車が進行方向左側に回避しつつ急制動措置を講じた後に原告車に追突したものであり、右追突の程度は非常に軽度であつた。
右のような軽度の追突で原告主張の傷害が生ずる筈はないから、原告主張の受傷、治療、後遺症は、本件事故により生じたものではない。
5 原告は昭和五〇年五月一五日にやはり追突事故により頸部捻挫を理由として後遺症等級九級一〇号の認定を受けており、仮に原告において現在若干の運動制限、神経障害が認められたとしても、それは全て右事故による後遺障害であつて、本件事故とは無関係である。
三 本訴抗弁
1 原告は本件事故発生直前に急右折しようとして停車したところを、被告車に追突されたものであり、原告には本件事故発生につき重大な過失がある。
2 被告晴義は原告に対し五一四万二七〇〇円を支払つている(内金六万円は見舞金である)。
四 本訴抗弁に対する答弁
1 本訴抗弁1は争う。
2 同2は認める。但し金六万円の見舞金はその性質上、損害賠償の弁済に充当されるべきではない。
五 反訴請求原因
1(一) 原告は昭和五六年二月一日、愛知県豊明市阿野町西平坪七丁目七番地県道交差点を乗用自動車(原告車)で右折のため停止していたところを、被告晴義の経営する食品加工販売業の従業員被告徹運転にかかる乗用兼貨物自動車(被告車)に追突されたと主張し、右追突事故を理由として、被告晴義に対し右事故による頸部捻挫の治療費、休業損害等の名目で金員交付を要求し、現在までに次記(二)の金員を支出せしめている。
(二) 支出金合計五一四万二七〇〇円
(1) 治療費として 金二〇八万二七〇〇円
(2) 休損として 金三〇〇万円
(3) 見舞金として 金六万円
(三) 被告らの右支出金のうち一二〇万円は、自賠責保険から支払を受け、填補された。
2(一) しかし、原告は昭和五〇年五月一五日に、やはり追突事故の被害にあつたものとして頸部捻挫を理由に後遺症等級第九級一〇号の認定をうけ、終身後遺症残存を理由として損害金の支給を受けている。
(二)(1) 原告は前記1の本件事故による損害賠償金請求をするにあたり、自己の症状として、頭痛、頸部痛、両手指しびれ感等を訴えている。
(2) しかし、右症状は全て前記(一)の事故時の症状でもある。
(三) 本件事故で原告が受けた衝突による衝撃は軽微なものであり、右の如き軽微な追突で現在原告の訴えるような障害を生ぜしめることは考えられない。
(四) 更に原告は本件事故後、現在に至るまで被告晴義に対して前記(一)の事故により受傷し、後遺障害がある事実を秘していたのみならず、自賠責保険請求手続中「既存障害」の照会に対しては「無い」旨の回答をしておる。
3 以上によれば、原告が主張するところの本件事故(追突)による受傷は全く虚偽のものであり、原告は被告晴義をして、本件事故により新たに受傷したものであると誤信せしめて前記1(二)の金員を出費せしめたものであるから、右行為は民法七〇九条の不法行為を構成するものといわねばならない。
4 よつて、被告晴義は原告に対し、不法行為を理由として金三九四万二七〇〇円(前記1(二)から(三)を控除)及びこれに対する反訴状送達の翌日である昭和五八年七月七日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
六 反訴請求原因に対する答弁
1 反訴請求原因1の各事実は認める。
2 同2(一)、(二)(1)の各事実は認める。
3 同2(二)(2)、(三)、(四)の各事実は否認する。
4 同3の事実は否認する。
5 同1(二)(3)の見舞金の支出はその性質上、被告晴義の損害となる余地はない。
第三証拠
本件記録の調書中の各書証目録、各証人等目録記載のとおりであるから、これらの記載を引用する。
理由
一 本訴請求原因1(一)(本件事故の発生)、反訴請求原因1(本件事故、被告晴義の支出金、自賠責保険からの填補)、2(一)(昭和五〇年五月一五日の事故―以下「前件事故」という)、(二)(1)(本件事故において原告の訴える症状)の各事実は、当事者間に争いがない。
二 本件事故の態様
1 成立に争いのない甲第七号証の五ないし七、一二、一三、原告本人・被告徹の各本人尋問の結果を総合すると次の事実が認められる。
前記一(本訴請求原因1(一))の日時ころ、場所付近において被告車は原告車に追従して時速約四〇キロメートルで追従走行中、被告徹は原告車が停車することなく直進して行くものと軽信し、遠方を見ながら原告車との車間距離を十分とらず漫然と進行したため、右方側道へ入るため予め右折合図をして進行し本件事故現場で停車した原告車を約七メートル前方に発見し、ハンドルを左に切るとともに、急停止の措置をとつたが間に合わず、被告車の右前部を原告車の後部に衝突させた。
本件事故当時はみぞれが降つており、本件事故現場道路は市街地にあり、北方面に向かい下り一〇〇分の二勾配であり、路面はアスフアルト舗装され、湿潤であり、被告車からの前方見通し・原告車からの前方後方見通しはいずれも良好であり、最高速度時速四〇キロメートル、追越しのための右側はみ出し禁止、駐車禁止の交通規制がなされ、信号機は設置されておらず、左右に側道があつた。
原告車は長さ四・六九メートル、幅一・六九メートル、高さ一・四一メートルの普通乗用自動車であり、被告車は長さ三・九メートル、幅一・六二メートル、高さ一・七六メートルの普通貨物自動車(定員三名、最大積載量六〇〇キログラム、事故当時の積載重量一八〇キログラム)であつた。
2 以上認定の事実によれば、被告徹には前方(先行車)の動静不注視等の過失が認められ、被告晴義が被告車の保有者であることは当事者間に争いがないから、被告徹は民法七〇九条により、被告晴義は自賠法三条(運行供用者責任)により、本件事故と相当因果関係ある原告の損害を賠償すべき義務を負うことになる。
3 なお被告らは、原告には急右折しようとして停止した過失があると主張し、被告徹の供述中には右主張に沿う部分があるが、前記のとおり同被告は本件事故直前まで先行する原告車の動静の注視を怠つていたことが明らかであるから右主張供述部分は採用できず、前記1掲記の各証拠によれば、結局、原告が急激な右折をしようとして急停車したことはないと認められ、前記認定の被告の過失、本件事故の態様によれば、過失相殺をするのは相当でないと認められる。
三 前件事故、既往症について
当事者間に争いのない事実及び成立に争いのない乙第一号証の八一ないし八五、証人若井一朗の証言、成立に争いのない乙第五号証の一に原告本人尋問の結果を総合すると次の事実が認められる。
原告(昭和一九年四月二〇日生)は昭和三六年ころ正面衝突に近い交通事故にあい、足の骨を折り、顔に傷を負い、入院したことがある。
原告は前記のとおり昭和五〇年五月一五日普通乗用自動車を運転して信号待ちのため停車中、普通貨物自動車に追突されて頸部挫傷の傷害を受け(一七〇日間入院)、その後遺症として頭痛、頭重感、両手のしびれ(左手が著しい)、両手指先の冷感、頸部運動不良、易疲労の症状を残して昭和五〇年一一月一九日ころ症状固定し、自賠法施行令二条別表第九級一四号の認定を受けた。
四 原告の症状・治療経過について
証人若井一朗の証言、証人小嶋洋一の証言、成立に争いがない甲第一、第二、第九号証の一ないし二五、第一〇号証の一ないし二三、第一一号証の一ないし一四九、第一二号証の一ないし八〇によれば、次の各事実が認められる。
1 原告は頸椎捻挫により本件事故当日である昭和五六年二月一日小嶋病院に通院して治療を受け、同月二日から同年六月三日まで一二二日間同病院に入院して治療を受け、同年六月四日から同年六月一一日まで同病院に通院して治療を受けた。
原告は本件事故当初、意識喪失はなかつたが、頭重感、頭痛、頸部圧痛を訴え、同年二月三日に左手しびれ、同年二月一二日に耳鳴りを訴えるようになり、その後、嘔気、左手冷感、頭がしめつけられるような頭痛を訴えるようになつた。
2 原告は昭和五六年六月二日から同年七月二一日まで若井クリニツクに通院した。原告は同クリニツクにおいてしめつけられるような頭部の痛み、左手のしびれ、冷感、左肩のだるさ、目まい、耳鳴り等を訴え、頸部旁脊椎神経ブロツク、大後頭神経ブロツク、左星状神経ブロツク等の治療を受けたところ、同年七月一〇日には手のしびれ冷感はなくなり、ほぼ健常な状態になつた。右同日、原告が星状神経ブロツクをやると痰が出るから調べて欲しいと訴えたので若井クリニツクの担当医師はそれまでの冷感、左肩のだるさ等についての治療を打ち切り、痰、せきについての検査をしたが異常は認められなかつた。
3 原告は昭和五六年七月二二日から再び小嶋病院に通院するようになつた。
五 以上認定の本件事故の態様、前件事故等による既往症、本件事故後の原告の症状・治療経過を総合すると、本件事故と相当因果関係がある原告の症状及び受けた治療、休業は、昭和五六年二月一日から同年七月一〇日までの間の九〇パーセントと認めるのが相当であり、同年七月一〇日より後の通院・治療・休業については本件事故と相当因果関係を認めるに足る証拠はない。
六 後遺症について
1 原告は本件事故による後遺症として頸部痛、頸椎の運動制限、頭痛、目まい、耳鳴り、左手指のしびれ等の神経障害(第一二級一二号該当)が残存していると主張し、それに沿うかの如き診断書(甲第二号証、乙第一号証の一五、一六、一八)は存するが、証人小嶋洋一の証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第一号証の一四によれば、これらの診断書は原告が前件事故により頸椎損傷の傷害を受け、前記のとおりの後遺障害を受けたことを知らないで作成されたものと認められるので、これらの診断書により直ちに、これらの後遺症状が本件事故によるものと認めることはできない。
なお、成立に争いがない乙第一号証の六ないし九、一六ないし二三及び弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第一号証の一ないし五、一〇ないし一五によれば、原告は、一旦は本件事故に関し、自賠法施行令二条別表第一四級の後遺障害認定を受けたが、その後、昭和五〇年五月一五日発生の前件事故により前記のとおり既に第九級一四号(神経障害)の認定を受け、それに基づく損害賠償額の支払を受けていたことが判明したため、本件事故に関して受けた前記後遺障害認定を取り消されたことが認められる。
2 また原告は本件事故により第五ないし第七頸椎椎間板の狭小化が生じ、後遺障害が生じたと主張し、成立に争いのない乙第一号証の一六、四八、証人小嶋洋一の証言によれば、原告の第五ないし第七頸椎椎間板の狭小化、後方骨棘項中隔石灰化が生じていることが認められるが、これらの証拠に前記認定の本件事故態様、原告の本件事故以後の症状経過、原告の年令・交通事故歴・既往症等を総合すると、原告主張の後遺障害を起こすべき第五ないし第七椎間板狭小が本件事故により発生したと認めるのは困難である。その他原告主張の後遺症が本件事故により発生したと認めるに足る証拠はない。
七 原告の損害
1 治療費等
(一) 成立に争いがない乙第一号証の五四、六六によれば、原告が小嶋病院に昭和五六年二月一日通院し、同年二月二日から同年六月三日まで入院して受けた治療の費用は金一八八万八六九〇円と認められる。
(二) 成立に争いがない乙第二号証の一五、一六、一八によれば、原告が若井クリニツクに昭和五六年六月二日から同年七月一〇日まで通院して受けた治療の費用は金二一万二八五〇円と認められる。
(三) 成立に争いがない甲第五号証の一によれば、昭和五六年五月一日から同年六月一一日までの間に原告が小嶋病院で受けた外来治療費等(文書料を含む)自己負担分は金一万二八九〇円と認められる。
(四) 前記のとおり右(一)ないし(三)の各治療費等の九〇パーセントが本件事故と相当因果関係ある損害と認められる。したがつて本件事故と相当因果関係ある治療費等は次の計算のとおりである。
(188万8690+21万2850+1万2890)×0.9=211万4430×0.9=190万2987(円)
2 入院雑費
前記認定のとおり原告は昭和五六年二月二日から同年六月三日までの一二二日間小嶋病院で入院治療を受けたものであり、その一日当りの入院雑費は六〇〇円と認めるのが相当であり、その九〇パーセントである金六万五八八〇円が本件事故と相当因果関係ある入院雑費と認められる。
600×122×0.9=7万3200×0.9=6万5880(円)
3 休業損害
原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第三号証の二、第四号証によれば、原告の本件事故直前の年収は給与、賞与合計約五六〇万円と認められる。
40万×12+40万×2=560万(円)
前記認定事実によれば本件事故と相当因果関係ある原告の休業損害は昭和五六年二月一日から同年七月一〇日までの一六〇日間分の九〇パーセントと認められる。
したがつて本件事故と相当因果関係ある原告の休業損害は次の計算により金二二〇万九三一五円と認められる。
560万×160/365×0.9=245万4794×0.9=220万9315(円)
4 入通院慰謝料
前記認定の本件事故と相当因果関係ある原告の傷害・入通院治療経過等諸般の事情を総合すると、本件事故と相当因果関係ある原告の入通院慰謝料は金一二二万円と認めるのが相当である。
5 前記五記載の理由で本件事故と相当因果関係ある原告の後遺症逸失利益・後遺症慰謝料請求は認められない。
6 既払金
被告晴義が原告に対し、本件事故に関する損害賠償金として金五〇八万二七〇〇円(但し内金一二〇万円について同被告は自賠責保険から填補を受けている)、見舞金として金六万円の支払を受けていることは当事者間に争いがない。
前記認定の事情を総合すると右見舞金の内金三万円は社交儀礼上相当な見舞金と認められるから、これを損害賠償の弁済に充当すべきではないが、これを超える金三万円分については、損害に対する弁済金の趣旨で交付されたものと認めるのが相当である。
7 前記1ないし4認定の損害合計から前記6認定の弁済金五一一万二七〇〇円を差し引くと、次のとおりとなる。
190万2987+6万5880+220万9315+122万-(508万2700+3万)=539万8182-511万2700=28万5482(円)
8 弁護士費用
原告が本件事故に基づく損害賠償請求のため弁護士に訴訟代理を委任し、相当額の報酬の支払を約したことは、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
本件事案の難易・請求認容額、その他一切の事情を総合すると、本件事故と相当因果関係ある弁護士費用として原告が被告らに請求しうるのは金三万円と認めるのが相当である。
9 前記7、8の各損害額を合計すると金三一万五四八二円となる。
28万5482+3万=31万5482(円)
八 以上によれば、原告が被告ら各自に対して請求しうる本件事故に基づく損害賠償金は金三一万五四八二円であり、被告晴義は本件事故による損害賠償に関して過払していないことになるから、その余の点につき判断するまでもなく、被告晴義の原告に対する損害賠償請求権は存在しない。
九 したがつて原告の本訴請求は、被告らに対し、各自本件事故に基づく損害賠償金三一万五四八二円及びこれに対する本訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和五八年一月一一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、被告晴義の反訴請求は理由がないからこれを棄却することとする。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 神沢昌克)